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ULTRAMAN ARCHIVES『ウルトラマン』MovieNEX特集

E-QASの具体的方法

 画質補正に関する具体的な技術については、制作技術部ポストプログループ・画質補正担当の松田秀樹氏に解説していただきました。

松田「すでにスキャンニング(テレシネ)の済んだHDCAM-SR(標準的なHDデジタルVTRフォーマット)を素材として、いただきました。マスターポジからHD化をしたとき、放送時には目立たなかった粒子なども高精細化で目立ってしまいます。今回は“E-QAS”のハードウェア、ソフトウェアを適用してグレインを軽減しつつ、フィルムの質感を損なわない状況を得られるよう調整しました。

 この戦闘機が飛んでいる部分で“Before”とあるオリジナルは黄色にくすんで見えます。
 それに対し、映像が連続しているとき波形モニタ変動を見て、時間軸の中で“これは粒子に起因するノイズだ”と検出をします。全体にフワフワしていたRGB信号を平均化することでノイズを消し、黄ばみが消えて本来あった青がはっきり出ました」

顔のアップでは表情にザラザラ感が目立つので、もうちょっとツルッとさせる感覚でチェックしました。

 各話を入念に見ながら、これぐらいの濃度でノイズを取るという方針を見きわめています。色味がついている粒子を時間の中で検出し、ノイズを取っていくことで本来の色がはっきり出てきました。かつての粒状性除去の技術だと、残像感が出たり輪郭が溶けることがありましたが、それも抑えています。もっとツルッとさせることもできましたが、全部消してしまうと作品の良さや雰囲気が減じて違和感が出るので、バランスを気にしつつ作業を進めました。シーンによる粒子感の変化も、均一にし過ぎるとオリジナル感を損なうので、目立つ場合のみノイズを消しています」

“E-QAS”の質疑

(エクサインターナショナル 寺田氏、松田氏、中澤氏)

——基本は自動で行い、気になるところは目視で調整するということですね。

松田「全体を直し、チェック時に何か問題があれば程度を変えたり、別のアプローチを考えます。第39話を含めて4話ぐらいノイズの大きい回がありましたが、他とはやり方を変えて全話同じ見た目になるよう調整しました」

寺田「ある部門が一次を手がけ、それを他の部門がブラッシュアップする場合もありますし、ソフトウェア中心の場合も、ハード中心の場合もあります。またソフトも種類によって得意不得意がありますので、うまく組み合わせながら最適なゴールを導き出すようなフローを見つけています。特に目視のチェックは絶対必要ですね」

——粒子に色がついているというお話は新鮮でした。

松田「弊社のカラリストによれば、1960年代のテレビ用カラー作品の初期は、フィルム上で感光する粒子が大きめで、粒子として色がついているもののRGBが目立つと言います。これが取れると、色がついていた壁も、グレーならグレーに見えるということです」

寺田「ムラのように出ていた色成分のノイズを除去することで、本来そのシーンが持っていた色が出てくるということになります」

——大型テレビの機能にも、粒状感を消すモードがありますが……。

松田「それは補完フレームを作って60fpsにする機能なので、どうしてもヌルヌル感が出てしまいますね。“E-QAS”は24コマの中で1枚1枚に対して処理をしますし、フィルム感を重視して調整しました。粒子は動きのあるところより、落ち着いてしゃべっているところ、暗い背景のシーンで目立ちます。そういう場面をチェックすることが多かったです」

——何か特別印象に残っているシーンは?

松田「もっとも気をつけたのは、第14話(「真珠貝防衛指令」)のフジ隊員がプレゼントをもらうシーンで、宝石がキラキラしている様子をキレイに見せたいなと思い、がんばって調整しました」

パナソニックの“MGVC”技術

 “MGVC”に関しては、パナソニックAVCディスクサービス株式会社ビジュアルソリューション部 制作課長の白木健一氏から技術中心に概説をうかがいました。

白木「弊社ではBlu-ray Discに収録する映像ファイルのエンコードを担当しました。映像作品のスタジオ用マスターは、通常は30から36ビットの階調を持っています。しかし、Blu-ray Discには24ビットまでしか収録できません。テレビ放送、配信でも同じ24ビットに制約されます。

 オリジナルの階調が無くなったことで、色のグラデーションのある部分にバンディングと呼ばれる縞模様が出ることがあります。また、情報量も減ってしまい、結果として解像感も減じてしまう、そんな弊害があるんです。
 一方、テレビでは、30ビット以上に対応しているものもありますし、HDMI規格も36ビットまで対応しています。メディア側の制約だけで、マスターに近い表現が出来ないわけです。
 そこでパナソニックでは、オリジナルの持つ階調情報を再現させるため、追加データをBlu-ray Discに持たせる技術を独自規格“MGVC”として開発しました。

 2012年に完成、2013年からは多くの市販ディスクでご採用していただき、市場に出ています。36ビットデータの階調に近づけることでバンディングが減り、階調度と同時に解像感も戻ってきます。
 われわれは、あくまで通常のBlu-ray規格を守った上で、そこに独自の規格を付加するため、互換性に問題はありません。MGVC非対応プレイヤーの場合でも、通常規格部分だけを読むことで普通に再生できます。

 対応した再生機では、規格と追加データ部分を足し合わせてプレイヤーから送り出すので、最大36ビット階調の映像を表現できるようになります。通常、転送レートは最大で40Mbpsまでしかありませんが、これも最大60Mbpsまで上がりますので、そこでも高画質化に寄与していると言えます。