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取材・構成:秋廣泰生
——前回は「かいじゅうのすみか」について、企画の概略をプロローグ的にうかがいました。そこで今回は、そこから少し踏み込んだ内容の根幹の様なところから、お話をうかがっていきたいと思います。
隠田:もともとこの世界観の出発点は“かいじゅうのすみか”のひと言だけだったんですよ。それに対して自分なりにテーマ性に近いレベルで、ある種のイメージストーリーを書いてみたんです。原稿用紙1枚のざっくりしたアウトラインの様なものですが、これが現在、オープンになっている「かいじゅうのすみか」を紹介するあらましの元になっています。この方向性が賛同を得られたことで、絵本としての企画が最初にスタートをきりました。そこから絵本用に物語の書き起こしに入っています。主人公を想定して、彼ら彼女らが、この世界に足を踏み入れていく予兆や段取りから考え始めていきました。
——でも前回うかがった様に、それだけでは単なる冒険譚(たん)みたいになってしまうので、もっと深いところでのテーマやコンセプトを据える必要があった訳ですね。
隠田:そこで自分の中で真っ先に浮かんだのが「怪彗星ツイフォン」(『ウルトラマン』第25話)でのイデ隊員の台詞だったんです。ツイフォンが通過した影響でギガスとドラコが現れて、さあ!どうしようという時に、ハヤタ隊員が機転を利かせた作戦で2体を争わせる。ひと安心したアラシ隊員がビートルの中から「我々はここから高みの見物だ」と言うんですが、それに対してイデ隊員が「人間はズルい生き物だ…」と洩(も)らす訳です。怪獣同士をぶつけ合って自分たちは生き延びるんだ…という感じのあの会話は、人間と怪獣の関係性を語る上で、ものすごく象徴的で重いものだと思っていて、それでいて耳で聞いて非常に伝わりやすいですよね。このやり取りが僕の考える「かいじゅうのすみか」への、裏返しの定義になっているんです。