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『ULTRAMAN ARCHIVES ウルトラQ UHD&MovieNEX』

ここで4K化作業の実際の流れを確認してみる。

池田:まず、大事に保管されていた当時のオリジナルネガフィルムを倉庫から出してきて、ホコリとか化学反応で出てしまうシミを物理的に人の手でクリーニングする作業を行います。実際にフィルムに触れるので非常に慎重な作業です。
そのネガ原版を4Kスキャンして1コマずつデータ化します。

まずここから気の遠くなるような細かな作業が始まっている。ちなみに、スキャンしていくコマは『ウルトラQ』全話で一体何コマあるものなのか?

池田:フィルム上のことで言うと、1秒は24コマですから、1話あたりだと約3万6千コマ。全28話分で換算すると、約100万コマになりますね。

驚異的なコマ数である…!! それを全部スキャンしていくのだから、この手間ひまは相当なものであろうことが想像できる。

池田:次に、データ化した100万コマを、パソコンを使用して傷やホコリを消す作業に移ります。この作業は1コマずつ処理していくものなので、非常に根気と細かな配慮が要求される仕事になるんですが…作業オペレーターさんの仕事を横で拝見していると、オペレーターさんの手の動きが目にも留まらぬ速さだったんで、ビックリしました。その作業もメイキングの為に撮影させていただいたのですが、カメラがオペレーターさんの手の動きに追いつけなくてホントに苦労しました…(笑)。
今回、実作業して頂いたのは東映ラボ・テックさんなのですが、皆さん、貴重なフィルムの扱いに長(た)けた職人さんばかりでした。そんな腕の確かな職人の皆さんが、丁寧に作業してくださって4K映像が出来上がっているんです。

4K映像になって、池田さんが一番驚いたことはどんなことであろうか。

池田:4Kになった映像を初めてチェックしたときは、とにかく驚きました。「こんなに綺麗なのかー!!」って思わず声に出して言っちゃうほどでした(笑)。4K化作業の制作統括をしている円谷プロ製作部の隠田部長も立ち会っていたんですけど、隠田さんもそのクオリティーに感動していました。
4Kを見ての驚きということでは、何と言ってもあの有名なメインタイトルですね。「ウルトラQ」のタイトルロゴが逆回転でグルグル回ってロゴが完成するところなんですが、タイトルロゴを形作っている素材を構成しているだろう粉のツブツブまでがはっきり見えるんです。とにかく4Kでは、撮影対象物、それが怪獣であれ、セットであれ、その質感がくっきり、はっきりと分かるというところがすごいというのは間違いないところですね。怪獣たちの皮膚、その作りが見て分かる。「ここはきっとこういう素材で作られているんだろうな…」というところが想像できてくるんです。その質感が明瞭に分かるというのは圧倒されました。
第10話「地底超特急 西へ」の冒頭に新東京駅の情景が映し出されますけど、ミニチュアの質感、セット上に配置されているもの、どこに何が配置されて駅の景観が出来上がっているのか、もう手に取るように分かる。その新東京駅のカットを見たとき、本当に息を飲みましたね。4Kって本当にすごいなと…。逆に言えば、35ミリフィルムの情報の記録度合いのすごさにも打ちのめされるというか(笑)。

今回、『ウルトラQ』の素晴らしさを支えている要因に、先ほどの画面解像度=画素の数の問題にプラス、今回採用になったHDR(High dynamic range、ハイ・ダイナミック・レンジ)も重要な働きを担っている。これまでの映像規格(SDR)では狭い範囲でしか表現できなかった、明暗の表現力を拡大することで、暗い部分が真っ黒につぶれたり、明るい部分が真っ白に飛んだりすることがなく、人間の目で見るのに近い映像表現が可能となるのだ。
明るいところは明るく、暗いところは暗く、と表現しても、その明るいところも、例えば太陽が直接当たって非常に明るく鮮やかに見える部分もあれば、廂によって陰ってワントーン落ちていても、視覚的には明るく見える、という微妙な差異がある。闇の暗さも同様で、本当に真っ暗で何も見えない暗さもあれば、どこかに光源があって、うっすらと奥まったところにある部分のディティールを視認できる暗さもある。その明るさ、暗さを幅を持って細かな部分まで認識・表現した映像にしているのが、このHDR技術なのである。

池田:今回、ネガフィルムをリマスターに使用した最大の理由が、このHDRです。これまで商品化された『ウルトラQ』の映像はSDRだったということもあって、明るさ・暗さが良くも悪くも一様になっていた部分があったかと思うのですが、すべての情報が残ったネガフィルムを元にHDRを用いることで、たとえば、本編の屋外ロケーションの日照の具合だったり、本来は光量として弱い、足りない部分をレフ板を使用したりして光量を足していたりするといったところまではっきり映像上で視認できるほど、映像の明瞭度が向上しているんです。これによって、映像上に再現されている空間の奥行きがまるで違って感じられるはずです。屋内セットであっても、カメラの手前にいる俳優さんたちに対して使われている照明と、奥の部分、俳優さんたちの背景を照らしている照明とでは自ずと光量が違っているはずなんですね。そういった照明の光量の差がはっきり分かる。必然的に映像にも奥行きが感じられます。4Kによる画素という部分とこのHDR部分の合体によって、これまでにない『ウルトラQ』の世界、フィルム上にどんな空間が広がって映っているのかが、はっきりと分かるようになったと思うんです。先程もちょっと触れた『ウルトラQ』のタイトルロゴの部分も、HDRのおかげでロゴの白さが更に輝いているみたいに際立っていました。一目で今までとは違うと分かりましたね。他の方が見た時もまずタイトルで質感と色味のくっきり度に感動されますね。

画素の数とHDRにより、映像そのものは圧倒的なクオリティーを我々に突きつけてくるようになった。ただ、その圧倒的クオリティーが、映像完成に向けての大きな懸念となって浮かび上がってくることになる。