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空想科学『かいじゅうのすみか』プロジェクト

空想科学『かいじゅうのすみか』プロジェクト

大事なものが伝わってくる駄菓子屋さん的な魅力を感じました。
小山薫堂(『かいじゅうのすみか』案内人)

聞き手:隠田雅浩(円谷プロダクション)

取材・構成:秋廣泰生

 11月7日(木)より東京ドームシティ Gallery AaMo (ギャラリーアーモ) で開催される『空想科学 かいじゅうのすみか 体感エンターテイメント』。そのポスターやフライヤーなどキービジュアルの中に「怖くて可愛い、醜くて美しい、そして弱くて強い。」という、キャッチコピーがあります。これまで絵本を舞台にした『空想科学 かいじゅうのすみか』は、基本的に言葉を拠り所にしないという思いから、ビジュアルイメージを主体に展開していましたが、このキャッチコピーは“かいじゅうのすみか”と呼ばれる空間と、そこに息づく怪獣たちに、何かの具体性をフワッと、けれどもどこかでカチッと、帯びさせてきています。
 実はこのキャッチコピーは、小山薫堂さんの手になるものでした。薫堂さんは放送作家、脚本家、ラジオ・テレビのパーソナリティーなど、多方面で活躍されていますが、中でも特に知られているのが、熊本県の営業部長兼しあわせ部長である〈くまモン〉の誕生をプロデュースした、言わば生みの親のひとりでもあるという事。薫堂さん自身も幼少期に怪獣たちと出会い、夢のかたまりであるキャラクターの持っている力を熟知されている方。そんな方ならではの言葉がこのキャッチコピーだったのです。そこで今回は、薫堂さんに“かいじゅうのすみか”への取り組みについて、お話をうかがってきました。

自分の知らない社会との接点

——まず、薫堂さんが最初に“かいじゅうのすみか”のイベント企画の説明を受けた時、“駄菓子屋さん的な魅力があるのでは?”という印象を持たれたそうですが、それは、どんな思いからだったのでしょう?

 「駄菓子屋さん的な魅力を感じたのは、ある神戸の駄菓子屋さんとの出会いを思い出したというのがありました。そのお店の方は、駄菓子というのは本当に子どもたちにとって大切なひとつの文化だという信念を持っておられて、実際に神戸のお店にうかがってみると、自分が子どもだった頃のワクワク感を思い出したんです。たくさんの駄菓子が色とりどりの容器や袋に詰まってお店いっぱいに並んでいて、それだけでも楽しくなってきますが、このお店の凄いところはイートイン・コーナーがあって、わずか100円なのに、とっても美味しい手作りクレープを売っていて、しかも作る様子が、それこそ冷蔵庫から材料を取り出すところから始まって、刻んだり和(あ)えたり、それを鉄板の上でクレープの皮を焼いてくるんで「はい、お待たせ!」って、熱々の出来立てが手渡されるんです。そういう過程をじっと見ているだけでも楽しい時間を過ごせますよね。これは感動的でした。大人たちが一生懸命に何かを作っている姿というのは凄く素敵だなと思いましたし、子どもたちに夢を与えたいという思いで続けていらっしゃるのが本当によく分かったんです。
 それに、自分が子どもだった頃を振り返ると、駄菓子屋って、近所の友だちや学校の同級生とも違う、別の校区の子どもたちと出会う、自分の知らない社会との接点みたいな場でもあったし、時にはお行儀が悪かったり好き放題にやってお店の人から叱られたり。そんな風に子どもたちがたくさん集まってくる中で、いい事とかやっちゃ駄目な事とかを初めて教わっていったような気がするんですね。親以外の大人に叱られたことって、なかなか無いじゃないですか。駄菓子屋は、家や学校以外の暮らしの中で大切なことを知っていく場だったのかもしれないですね。
 そういう意味でも“かいじゅうのすみか”っていうイベントの中身や思いを聞かせていただいた時、家や学校で教えてくれる事とは全く違うけれど、何か大事なものが伝わってくる様な、駄菓子屋さんでの体験に近いイメージを受けたからなんです。まぁ、さすがに会場で怪獣から叱られるってことは無いでしょうけど(笑)」

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