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前半部である『かいじゅうのすみか』会場内では、さほど謎解き要素はない。
だからといって退屈ということはまったくなく、冒険者の手記を読み、その冒険を追体験しながら「かいじゅうのすみか」の世界を存分に楽しむ事ができる。
さまざまな最新技術で再現された、かいじゅうたちが住む異世界。そこに更なるAR体験と、欠けている手記を埋めていくうちに、探検家がこの世界で何を知ったのかが少しずつ分かってくる。

会場の最後、研究所のようなエリア「探検家ラボ」に到達して、ようやく本格的な謎解きの要素が現れる。冒険者が残した最後の手記を彼はある場所に納めたらしい。この謎を解くことが会場内での最後のミッションとなる。
ちなみに、「探検家ラボ」は、ウルトラマンシリーズが大好きな人間ならそれだけで数時間過ごせるほどのワクワク感満載である。そこまでのエリアがかいじゅうそのものの登場による直接的な演出だとすると、「探検家ラボ」は本当に探検家がかいじゅうの世界に行けば集めるであろう収集品による間接的な演出であり、膨大なアイテム1つ1つを眺めているだけで、ウルトラマンシリーズの長い歴史が見えてくる。

冒険者の最後の手記を手に入れたら、会場の外に出て本格的な謎解きのフェイズになる。
最後の手記を手がかりに謎を解いていくと、なぜ異世界へのポータルが発生したのか、そのポータルの原因は何だったのかが明かされる。そして、東京ドーム上空に巨大な「何か」が姿を(AR経由で)現して、物語は幕を閉じる。

『AnotheR story』を謎解き視点で見た場合、方向性としては物語志向、体験感志向である。
謎解きそのものを競うのではなく、謎を解いていくことで物語の全容が見えてくる快感を楽しむ方向で組み立てられている。ゆえに、謎そのものも「謎解きをさせるための謎」「その場所を利用するだけの謎」ではなく、きちんと物語の構造に沿って謎が提示され、解いていく形になる。
制作スタッフに聞いたところ、「物語の必然性がある謎」作りにはかなり苦労したという。物語と絡み合わずに単に関門として謎を作るのに比べ、はるかに手間が増えるからだ。

専用タブレットは「石版」、
ARを起動させるマーカーは「石碑」

同じように、AR技術もこの世界を物語るために使われている。
近年、スマホが積極的にAR技術をサポートしてきたせいもあってか、ARが謎解きや周遊型ゲームに使われる事が増えて来た。
だが、とても残念なのはなぜARがそこで使われているのか、という説明や設定がほとんどないということだ。悪い言い方をするなら、いまだにAR技術そのもので驚かせようとしている姿が見えてくるのだ。