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鈴木俊太郎の円谷音楽館 第2回『福田裕彦さんとウルトラQ』

鈴木俊太郎の円谷音楽館
第2回「福田裕彦さんとウルトラQ」

鈴木俊太郎

皆さんこんにちは。さて、前号を読んで下さった福田裕彦さん(Vol.1の文中でご紹介した作編曲家)から、メールを頂きました。その中で興味深いご指摘を頂いたので、まずは冒頭でご紹介しましょう。
「ウッドベースの役割、というか、存在感のお話ですが、存在感が薄いのは当時の普及型TVのモノラルのスピーカー(おそらく250hz以下がほとんど出ない)では、本来のウッドベースの帯域がカバーしきれないことを、クリエイター側がある程度以上認識していたからであろうと思っています」
をを、なるほど! これは専門家ならではの超マニアックな視点ですね。ということで、今回は福田さんに、クリエイターならではの視点で、『ウルトラQ』のサントラにまつわる濃~いお話をたっぷり伺うことにしましょう。

——今日はよろしくお願いします。早速ですが、前回触れさせて頂いた、『ウルトラQ』のテーマ曲について教えて下さい。

福田:僕が『ウルトラQ』のメインテーマをリメイクしたとき、ギターは、無類の『ウルトラQ』マニアのギタリスト、古川望さんにお願いしました。彼は、『ウルトラQ』のほとんどの曲を、譜面を見ないで弾けるくらいです(笑)。
リメイクで使ったギターはストラトキャスターでしたが、あの太い音が出せないんですよ。だから、あとからウッドベースを重ねました。オリジナルはいわゆるジャズで使うフルアコースティックギターで弾いているんですが、古川さんが、「こんな凄い音のフルアコ、今はどこにもないよ」と笑っていました。弦高が高いギターというのは、音が太いんです。しかも、現存する『ウルトラQ』のオケはオリジナルではなく『ウルトラファイト』用のコピーで、実は全ての音が微妙に歪んでいるんです。だから余計に「太く」聞こえるのかもしれませんね。
僕は最初、メインテーマのリフはギター1本だと思い込んでいました。いまだに、あれにベースが入っているかはどうかはわからない。というのは、当時のテレビのスピーカーの性能を考えると、あそこでベースを使おうが使うまいが聴こえないんじゃないかなと思うんです。一度検証してみたいですね。

——『ウルトラゾーン』では、かなりの曲数をリメイクされていますが、印象に残っている曲ってありますか?

福田:「ドン! カーッ ギギギリッ」っていうオープニングですね。最後のギギギリッというのは、リメイクではギロ(ヒョウタンの内側をくりぬき、外側に刻みを入れて棒でこすったり叩いたりして演奏する楽器)で録音したんです。
でも、終わってから思ったんですけれど、エトムント・アングラーの「おもちゃのシンフォニー」という曲があって、木の歯車を回して音を出す楽器が使われているんです。もしかして、当時はこれを使ったんじゃないかと。これは個人的な仮説です。

——当時の資料があったら解明されますけど、謎のままですね。

福田:当時のことで言うと、スタジオの中を想像するわけです。宮内國郎先生というと、ついつい大先輩って思ってしまうけど、このサントラを手がけられた時はお若いんですよね。当時33~34歳の青年なわけです。それで、劇伴のレコーディングって時間がないんですよ。特にテレビですしね。映画でさえ予算と時間が限られていたのに、テレビはもっと制約があったと思うんです。
そうすると、宮内さんの書いた通りの音が出ていないことは多々あっただろうと思うわけです。典型だと思ったのは「暴走」という曲。ブラスが印象的にリズムを刻むんですけど、誰一人として吹けていないんですよ(笑)。しかも、リズム隊と上モノが半拍くらいずれているんですよね。

——「暴走」を聴き比べると、リメイク版ではかなりリズムが正確ですよね。

福田:リメイクにあたって、宮内先生が書いたであろう通りに録音しようとしました。すべて生楽器なんですけど、たとえば管楽器がちゃんと吹けていたらこの音だっただろう、というのを特定して録音したんですよ。

——つまり、宮内先生の頭の中で鳴っていたであろう音に仕上げたということですね。

福田:そう。当時の現場って、目の前に譜面が置かれてそのまま1回リハをやったら、「はい、本番」って感じだったはずなんです。今はマルチトラックでパートごとに修正が可能だから、たとえば「トロンボーンの12小節目だけ間違えたからやり直します」とかできますけど、当時は一発録りですから、誰かが間違えても修正できないんですよね。全員で頭からやり直すしかない。だから、譜面通りでなくても時間がないからオッケーを出さざるを得ない状況ってあったと思うんですよね。きっと、宮内先生自身、内心がっかりされた曲があるんじゃないかと思うんです(笑)。

——なるほど。それは作曲家ならではの視点ですね。
それではここで、オリジナルとリメイクの「暴走」を聴き比べてみましょう。