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日本人とウルトラマン

日本人とウルトラマン
第10回 ウルトラマンはなぜ闘うのか

中沢新一

中沢 新一(なかざわ しんいち)

1950年、山梨県生まれ。思想家・人類学者。明治大学野生の科学研究所所長。インド・ネパールでチベット仏教を学び、帰国後、人類の思考全域を視野にいれた研究分野(精神の考古学)を構想・開拓する。著書に『チベットのモーツァルト』、『森のバロック』『フィロソフィア・ヤポニカ』『アースダイバー』『カイエ・ソバージュ』シリーズ、『芸術人類学』『野生の科学』『大阪アースダイバー』『熊楠の星の時間』ほか多数。日本の各地における歴史や文化の生成を人文科学と自然科学の両観点から解き明かそうとする試みである「アースダイバー」プロジェクトや展覧会の監修など、多岐に渡る活動を展開している。

 「来たぞ われらの ウルトラマン」。3番まである主題歌「ウルトラマンの歌」において、毎回繰り返されるのがこの歌詞です。この歌詞は『ウルトラマン』の本質をよくあらわしています。ウルトラマンはやってくる。ぼくらのため、正義のため、地球のために、怪獣と闘うためにウルトラマンはやってきます。世界のバランスが崩れて怪現象が起こる『ウルトラQ』の世界には、その怪現象をつくりだす主として怪獣があらわれましたが、その怪獣たちと対峙する確たる存在はでてきませんでした。ところが『ウルトラマン』ではその怪獣たちと闘うために、正義を担った宇宙人ウルトラマンが「やってきます」。それまでは怪獣たちはアンバランスをもたらす自然力の化身にすぎなかったのに、これからは正義のヒーローに立ち向かっていかなければならないヒール役を演じなければならなくなりました。この変化はいったい何を意味しているのでしょう。どうやらここにはウルトラマンの本質に関わる秘密が隠されているようです。今回はウルトラマンの闘いそのものに焦点を合わせて、このときおこった変化の意味を探ってみたいと思います。