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日本人とウルトラマン

日本人とウルトラマン
第12回 神話の終わりに

中沢新一

中沢 新一(なかざわ しんいち)

1950年、山梨県生まれ。思想家・人類学者。明治大学野生の科学研究所所長。インド・ネパールでチベット仏教を学び、帰国後、人類の思考全域を視野にいれた研究分野(精神の考古学)を構想・開拓する。著書に『チベットのモーツァルト』、『森のバロック』『フィロソフィア・ヤポニカ』『アースダイバー』『カイエ・ソバージュ』シリーズ、『芸術人類学』『野生の科学』『大阪アースダイバー』『熊楠の星の時間』ほか多数。日本の各地における歴史や文化の生成を人文科学と自然科学の両観点から解き明かそうとする試みである「アースダイバー」プロジェクトや展覧会の監修など、多岐に渡る活動を展開している。

 日本人はなぜウルトラマンを生み出したのか。そして、なぜウルトラマンは日本人の心に生き続けているのか。ウルトラマンという存在を創造した日本人の心性をめぐる私たちの旅は、ひとつの頂きにたどり着こうとしています。私たちはそこに、神話的思考と高度な産業的な文明が自然な形で融合している日本人の心性を見出してきました。『ウルトラマン』は科学や技術が高度に発達した文明社会の出来事を描いているように見えるのですが、怪獣やウルトラマンが織りなすその物語は神話の思考に依っているのでした。そんなわけですから「日本人とウルトラマン」という私たちのテーマを正確に表現してみると、「日本人の神話的思考とウルトラマン」、ということになるでしょう。人間−科学−自然という物語を紡いでいる三つの軸も、じつは神話的思考が自然や科学や人間の世界をどうとらえたかという問題を示す軸となります。神話の物語は形を変えて際限もなく続いていくことができます。でも現実世界の中ではいつかは終わりを迎えないとなりません。神話をどう終わらせるか、これが問題です。『ウルトラマン』はこの問題に、じつに深遠な答えを与えるのです。