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日本人とウルトラマン

日本人とウルトラマン
第15回 相対性の宇宙へ

中沢新一

中沢 新一(なかざわ しんいち)

1950年、山梨県生まれ。思想家・人類学者。明治大学野生の科学研究所所長。インド・ネパールでチベット仏教を学び、帰国後、人類の思考全域を視野にいれた研究分野(精神の考古学)を構想・開拓する。著書に『チベットのモーツァルト』、『森のバロック』『フィロソフィア・ヤポニカ』『アースダイバー』『カイエ・ソバージュ』シリーズ、『芸術人類学』『野生の科学』『大阪アースダイバー』『熊楠の星の時間』ほか多数。日本の各地における歴史や文化の生成を人文科学と自然科学の両観点から解き明かそうとする試みである「アースダイバー」プロジェクトや展覧会の監修など、多岐に渡る活動を展開している。

 こうして、SFの要素を全面的に取り入れた『ウルトラセブン』は、これまでの『ウルトラQ』、『ウルトラマン』の世界観から大きく転換していくこととなりました。神話からSFへ。どこか愛嬌のある怪獣を相手に戦うことで、失われた世界のバランスを回復しようとする神話の時間は終わりを告げ、人間自身の秘め持つタナトスへの欲望を具現化した宇宙人を敵とした戦闘がはじまりました。

 『ウルトラQ』、『ウルトラマン』はある意味で調和に満ちた世界から出発しました。科学と産業が発達し、暮らしが豊かになっていった戦後好景気を背景に日本人の日常は表面的にはとてもうまくいっているように思えたものです。しかし一見調和に満ちたその世界には、どこか不調和をもたらす暗い影の部分も存在していて、そのことを庶民もうすうす感づいていました。