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日本人とウルトラマン

日本人とウルトラマン
第16回 科学とロマンス

中沢新一

中沢 新一(なかざわ しんいち)

1950年、山梨県生まれ。思想家・人類学者。明治大学野生の科学研究所所長。インド・ネパールでチベット仏教を学び、帰国後、人類の思考全域を視野にいれた研究分野(精神の考古学)を構想・開拓する。著書に『チベットのモーツァルト』、『森のバロック』『フィロソフィア・ヤポニカ』『アースダイバー』『カイエ・ソバージュ』シリーズ、『芸術人類学』『野生の科学』『大阪アースダイバー』『熊楠の星の時間』ほか多数。日本の各地における歴史や文化の生成を人文科学と自然科学の両観点から解き明かそうとする試みである「アースダイバー」プロジェクトや展覧会の監修など、多岐に渡る活動を展開している。

 ウルトラマンシリーズを特徴づける大きな要素として、自然−人間−科学という三つの軸で構成されている世界という話をしてきました。この三つの軸の間の関係の変化によって、バランスが崩れて秩序が壊され、さまざまな事件が起こることで物語が展開していく様をこれまで追ってきたわけです。ではその三つの軸の関係が『ウルトラセブン』の世界ではどうなっているのか、今回はそのことを探っていこうと思います。

科学の軸

 『ウルトラセブン』は科学を基軸としたSF物語です。『ウルトラQ』や『ウルトラマン』でも科学の軸は大きな働きをしていましたが、前面に出てくるまでには至っていませんでした。民間伝承や超常現象や異常心理などがより大きなテーマとしてとりあげられていたからです。それが『ウルトラセブン』になると、物語の基本テーマが全面的に科学の軸のほうに移っていくことになりました。

その当時の時代背景のことを考えてみますと、これはきわめて自然な流れでした。『ウルトラセブン』の生まれた1960年代後半は、世界中で科学への期待が高まっていた時代でした。家電の普及が進み、人類は新たなフロンティア、宇宙へと飛び出していました。1961年のソ連による有人飛行の成功に始まり、65年には宇宙遊泳が実現、1969年のアポロ11号月面着陸と、数年前にはとうてい考えられもしなかったことを、科学技術はつぎつぎと実現していました。子供たちばかりではなく大人たちも科学の可能性に心を奪われていました。