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円谷怪獣のひみつ

円谷怪獣のひみつ

切通理作

(撮影・杉本晋一)

切通理作 きりどおし・りさく

1964年、東京都生まれ。文化批評。『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』『怪獣少年の<復讐> 70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)『山田洋次の<世界>』(ちくま新書)『ポップカルチャー・若者の世紀』(廣済堂出版)『失恋論』(角川書店)ほか多数。『宮崎駿の〈世界〉』(現ちくま文庫)でサントリー学芸賞受賞。2013年12月より、日本映画批評メルマガ『映画の友よ』(夜間飛行)を配信中。それが昂じて初監督作品『青春夜話 Amazing Place』(アルバトロスよりDVD化)、責任編集の雑誌『シネ★マみれ』を作る。

第2回 怪獣、それは分類不可能?

怪獣と「出会う」瞬間

 前回、怪獣の「巨大であること」の魅力を書いた。
 今回はまず、その「巨大さ」はどのように表現されてきたのか、円谷プロの創始者・円谷英二が、特技監督として、ウルトラマンシリーズ以前に手がけた怪獣映画をもとに考えていきたい。
 日本の怪獣映画第一作『ゴジラ』の二年後に生み出された、初のカラーによる怪獣映画『空の大怪獣ラドン』の主役怪獣ラドンは、大空を超音速で飛ぶ翼竜だった。
 ラドンは阿蘇山で生まれ、飛び立った姿は最初、阿蘇山に観光で来ていたアベックによって目撃されるが、その時点で、観客にはまだ見えていない。
 アベックの女性が空の一点を見上げて叫ぶと、次の場面では、突風に煽られて、2人が地に伏し、倒れているのが映し出される。一体何が起こったのか?
 やがて、アベックの男が、女を撮ろうと用意していたカメラのフィルムが現像され、空に翼の端っこのようなものが、影のように映り込んでいるのが見える。それを古生物学者が翼竜プテラノドン、通称ラドンだと確認する。
 おりしも世界中で目撃されていたUFOが、実は超音速で飛んでいたラドンだったことがわかる。
 ここには怪獣の、巨大であるがゆえの三つの宿命が描かれている。

 1 すぐには何者だかわからない場合がある
 2 人間社会に出現しただけで被害をもたらす
 3 姿が確認されたことで「事件」となり、世界中の人が知ることになる

 怪獣は、ビルとビルの間から足元が見えたり、丘の上や、部屋の窓からにゅっと顔を現わしたりすることがある。人間の目の大きさからは、すぐにその全貌がわからない「可視と不可視の間にあるもの」で、物語が進むにつれて、誰もが知る存在になる。
 怪獣の居る世界と、我々の現実の間には、不連続感とでもいえばいいのだろうか、いったん視界がさえぎられており、その仕切りが取り払われると、「自分は今怪獣と出会っている!」という高揚感を見ている者にもたらす。
 『ウルトラQ』の「宇宙からの贈りもの」では、洞窟の中の温泉で温められ、大きくなった卵から孵化(ふか)した、見上げるほどの大きさであるナメゴンが人間を襲うくだりのしばらく後、駆け付けた人々の前で、より巨大になったナメゴンが山肌を突き破って出現する場面がある。