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円谷の本棚から
第3回「ウルトラ怪獣幻画館」(筑摩書房刊)

『ウルトラマン』の中心的クリエイターによるノベライゼーション

今より少し昔。
多くの特撮ファンにとって、“紙の本”はとても重要かつ、心ときめくアイテムでした。
そんな古き良き時代に、ファンの心を揺さぶり、魂の渇きを癒してきた“本”に焦点を当てていく「円谷の本棚から」。第3回はウルトラマンシリーズを代表するあの名監督の著書を取り上げます。

書題は「ウルトラ怪獣幻画館」と言います。この「ウルトラ怪獣幻画館」は、実相寺昭雄監督が生前に描き溜めておられたウルトラ怪獣をテーマにした絵を集めて編まれた、文庫オリジナルの書籍です。実相寺監督が手掛けられた映像作品に登場するシーボーズやメトロン星人といった怪獣たちを筆頭に、実相寺監督が興味と関心を寄せた他のウルトラ怪獣やウルトラヒーロー、地球防衛チームのメカニックなどを題材にした絵が載せられているものです。
かつて東京都世田谷区内にあった円谷プロ本社内の怪獣倉庫を、実相寺監督が折に触れて訪れ、倉庫でひと時の休息を得、新たな活躍の時を待つ怪獣たちの姿を眺めていた、という話を聞いたことがあります。怪獣たちの姿をただ遠巻きに眺めているだけではなく、群れとなってそそり立つ怪獣たちの間に自ら足を踏み入れ、しばらくそこから出てこなかったと言われます。きっとそれは、実相寺監督と怪獣たちの楽しい語らいのひと時だったのでしょう。この「ウルトラ怪獣幻画館」を手にし、ここに収められた実相寺監督自ら描き起こされた怪獣たちの姿を追っていくと、この絵の数々は、そういった実相寺監督と怪獣たちの語らいのうちに育まれたイメージや想いを結晶して、生み出されていったものではないかなぁ……と、そんなことが思い浮かんできたりします。
この絵の数々は誰かに乞われたわけでも、仕事として依頼されたわけでもなく(一部は自著のために起こしたという特例も存在しますが)、実相寺監督が気の向くまま筆の赴くままに描き起こしていったものです。つまり、ほとんど全く趣味の範疇(はんちゅう)というヤツです。実際のところ、これらの絵は実相寺監督が手掛けられた膨大な書画の、まさに氷山の一角でしかないそうで、怪獣やウルトラマンシリーズをお題に区切ってもこれだけの数があるわけです。その全容をうかがってみたい、というのもファンからすればムベなるかな、といったところかとも思うのですが……。