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日本人とウルトラマン

日本人とウルトラマン
第6回 『ウルトラQ』から『ウルトラマン』へ

中沢新一

中沢 新一(なかざわ しんいち)

1950年、山梨県生まれ。思想家・人類学者。明治大学野生の科学研究所所長。インド・ネパールでチベット仏教を学び、帰国後、人類の思考全域を視野にいれた研究分野(精神の考古学)を構想・開拓する。著書に『チベットのモーツァルト』、『森のバロック』『フィロソフィア・ヤポニカ』『アースダイバー』『カイエ・ソバージュ』シリーズ、『芸術人類学』『野生の科学』『大阪アースダイバー』『熊楠の星の時間』ほか多数。日本の各地における歴史や文化の生成を人文科学と自然科学の両観点から解き明かそうとする試みである「アースダイバー」プロジェクトや展覧会の監修など、多岐に渡る活動を展開している。

『ウルトラQ』の世界

 ここまで確かめてきたとおり、『ウルトラQ』では毎回アンバランスが主題となっていました。日常の世界を形作っているバランスが、人間による自然破壊やゆがんだ社会の現実から生まれる人間のこころの病理などが引き金となって、さまざまなレベルでの釣り合いが崩れ、そこから怪獣や怪奇現象が現れます。人間はそのつどそのつど自分に可能な方法で、それに対処しようとします。相手を破壊したり、抑えたり、押し戻したりしながら解決を試みるのです。そのときいちばん頼りになるのが最新の科学の力であるというのは以前お話した通りです。こうして怪獣は都市を破壊し、日常を脅かすネガティブな存在として毎回撃退されていくわけですが、しかし『ウルトラQ』において、怪獣が「悪」かというと、ことはそう単純ではありません。

 放送第1話『ゴメスを倒せ!』に登場するゴメスとリトラを見てみましょう。道路工事の現場で、恐ろしく大きな怪物が目撃されます。アルコール依存症の男の錯覚かに思われたこの目撃談。その場所では「トンネルの中にトンネルが現れ」、謎の物体が発掘されたというのです。言葉では説明のつかないこの現象を写真で伝えようと、新聞記者の江戸川由利子は、パイロットの万城目淳、戸川一平と現場へ向かいます。トンネルを探索する由利子と万城目。一方、残された一平は、なにかヒントを得ようと、古代生物に詳しいジロー少年と由利子の同僚、新田記者と共に、洞窟で有名な金峰山洞仙寺へ向かい、そこで怪獣ゴメスとその天敵、リトラの伝説を記した古文書を発見するのでした。