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円谷の本棚から
第6回「BARASA de BOOSKA I Bank/編著」(扶桑社刊)

日々の暮らしの中に快獣がいる

今より少し昔。
多くの特撮ファンにとって、“紙の本”はとても重要かつ、心ときめくアイテムでした。
そんな古き良き時代に、ファンの心を揺さぶり、魂の渇きを癒してきた“本”に焦点を当てていく「円谷の本棚から」。第6回は、最近は「怪獣界の大御所」としても脚光を浴びた、円谷プロを代表するあの癒し系快獣をテーマにした書籍を取り上げます。

ブースカについて…は、もう説明要らないぐらい、皆さんご存知のことだと思います。『ウルトラQ』に登場したコイン怪獣カネゴンが、子供たちの日常に溶け込んでドタバタ騒ぎを繰り広げたところが話題になり、これがヒントとなって、「子供たちの毎日の暮らしの中に怪獣が共存している」という世界観発想のもとに生み出されたキャラクター、それがブースカです。その当時の言葉で言えばソフトキャラクター、今で言えば…ファンシーキャラクターということになるんでしょうか。そういった存在の走りとして生み出されたワケです。カネゴンという発想根源の先輩はいますが、ブースカというキャラクター、快獣が生まれたのは今もって考えてみても、とても画期的な出来事だったと思います。ブースカが生まれた頃は、『ウルトラQ』のヒットに端を発する怪獣ブームのまさに渦中でした。人類の平和を打ち破るどんな脅威的存在=怪獣が出てくるか?と子供たちが日々関心を寄せている最中に、ブースカは登場しています。しかも、脅威的存在ではなくて、あくまで人間の友だち、極めて同格的な存在(ブースカを生み出した屯田大作少年の両親から見ればペットのような感覚だったかも知れませんが、大作少年やその仲間たちには、ペットというよりももっと人間に近い、弟分のような存在として認識していたと思うのです)という扱いです。脅威じゃない怪獣、その存在が人間を困らせたりしない、それゆえに「怪」獣ではなくて「快」獣なんだ、とするその見事なコンセプトは、怪獣ブームに一層の幅を持たせました。怖い怪獣ばかりじゃないんだ、というブームの裾野を広げるのに貢献したブースカ。その先見性にはホントに目を見張るばかりです。

人間に友好的な快獣、ウルトラ怪獣とは異なる立ち位置という見事なタッチポイントを活かし、ブースカは折に触れて活躍してきました。特にテレビシリーズの最後で、ブースカが地球に戻ってくるなら20年後…と説明されていたことを受け、1980年代末期にはブースカへの注目度が上がり、ブースカを復古する動きが円谷プロ内外で起こりました。円谷プロとしてのメインはウルトラ怪獣であることはモチロンなのですが、ブースカにまつわるグッズは少量ながらも定期的に出ていて、いわゆるキモカワ系のキャラとしてちょっと売り出し方を変えて新規のアイテムも増やして押し出したという戦略も効を奏して、90年代前半はかなりブースカ押しのムードが高まった時期でした(その裏には、ブースカの地球帰還を描くようなテレビシリーズの成立を目指そう!といった様々な関係者の思惑も交錯していたワケですが…)。この時期、リアルタイムでブースカを知らない(その当時の)女子高生たちにも「カワイイ!」と認知されてグッズに注目が集まったり、CМのタイアップキャラとしてブースカが登場して「懐かしい!」とリアルタイム世代が盛り上がったりして、ブースカ復古ムードを押し上げていました。テレビシリーズ最終回から30年目を迎える1997年、そういったブースカに向けて吹いた心地良い順風の総まとめとして企画され、出版されたのがこの「BARASA de BOOSKA」だったというワケなのです。