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円谷の本棚から
第7回「ウルトラマン青春記 フジ隊員の929日」(小学館刊)

起こった出来事をあくまでも率直に、
何も飾り立てずに書く

今より少し昔。
多くの特撮ファンにとって、“紙の本”はとても重要かつ、心ときめくアイテムでした。
そんな古き良き時代に、ファンの心を揺さぶり、魂の渇きを癒してきた“本”に焦点を当てていく「円谷の本棚から」。第7回は、ウルトラマンシリーズのファンなら知らない人はいないでしょう。シリーズの原点である『ウルトラQ』と『ウルトラマン』に連続出演されたあの女優さんが執筆された書籍を取り上げます。

今回お題とするのは、1994年に小学館から刊行された「ウルトラマン青春記 フジ隊員の929日」です。筆者は桜井浩子さん。『ウルトラQ』で江戸川由利子を、『ウルトラマン』ではアキコ隊員を演じたご本人です。そのご本人が『ウルトラQ』『ウルトラマン』の撮影当時、ご自身の身に起こったことについて、感じたこと、思ったことをある種日記のように、ある種見聞記のようにまとめたものがこの「ウルトラマン青春記」です。

いま私たちは、『ウルトラQ』や『ウルトラマン』の映像をたやすく視聴することが出来、どんなお話か、どんな怪獣が出るか、登場人物がどんな行動を取るかをすぐに知ることが出来ます。コアなファンなら、第〇話の怪獣の大暴れがどんなカットで構成されていて…と説明できちゃったりするかも知れません。しかし、どんなにシリーズの映像に精通したファンであっても、その裏側、撮影の現場で何が起こり、撮った映像がどんな過程を経て「撮影済OKテイク素材」となっていったかを知る術はなかなかないことだと思います。『ウルトラセブン撮影日誌』のような、撮影現場の様子の一端を知る貴重な資料も存在はしますが、たとえこれを通読したとしても、「ああ、この時、ライティングでこんな失敗があって、だからNGが連発されて…」みたいな生の現場の空気を正確に読み取ることは至難の業と言えるのではないでしょうか。つまり、ファンにとって、撮影現場で何があったかを知ることは禁断の扉を開ける恐れ多い体験であると同時に、夢の一端に触れる得難い機会であるのも間違いないと思うのです。「ウルトラマン青春記」はまさにその瞬間、撮影の現場で何が起こり、俳優さんとスタッフさんがどんなやり取りを交わしたのかが書かれている貴重な記録なのです。俄然興味をそそられるでしょう?