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日本人とウルトラマン

日本人とウルトラマン
第8回 物語の発生

中沢新一

中沢 新一(なかざわ しんいち)

1950年、山梨県生まれ。思想家・人類学者。明治大学野生の科学研究所所長。インド・ネパールでチベット仏教を学び、帰国後、人類の思考全域を視野にいれた研究分野(精神の考古学)を構想・開拓する。著書に『チベットのモーツァルト』、『森のバロック』『フィロソフィア・ヤポニカ』『アースダイバー』『カイエ・ソバージュ』シリーズ、『芸術人類学』『野生の科学』『大阪アースダイバー』『熊楠の星の時間』ほか多数。日本の各地における歴史や文化の生成を人文科学と自然科学の両観点から解き明かそうとする試みである「アースダイバー」プロジェクトや展覧会の監修など、多岐に渡る活動を展開している。

 宇宙の正義を象徴するコスモス(=秩序)の原理の表現として、ウルトラマンの造形は誕生しました。それまでカオスに覆われていた世界の中に、コスモスの正義を打ち立てることで世界には秩序がもたらされ、秩序を支える善とそれを破壊しようとする悪とに、世界は二分されていきます。そのような二元性がつくられる以前の世界につながる『ウルトラQ』から、善悪二元論とコスモスの秩序がそこに生み出される『ウルトラマン』の世界へ。前回はその変容を主に造形の側面から取り上げました。そこには図らずも、仏教伝来以来「超越」の思想を受容していった日本人の仏像制作の試みと同じ足取りを見てとることができたのです。今回はそこからさらに踏み込んで、カオスとコスモスに二分された怪獣とウルトラマンの紡ぎ出す、物語の構造的変化について見ていきたいと思います。

英雄の登場–分断された自然とその回復