TEXT SIZE

標準
日本人とウルトラマン

日本人とウルトラマン
第9回 われらの科学特捜隊

中沢新一

中沢 新一(なかざわ しんいち)

1950年、山梨県生まれ。思想家・人類学者。明治大学野生の科学研究所所長。インド・ネパールでチベット仏教を学び、帰国後、人類の思考全域を視野にいれた研究分野(精神の考古学)を構想・開拓する。著書に『チベットのモーツァルト』、『森のバロック』『フィロソフィア・ヤポニカ』『アースダイバー』『カイエ・ソバージュ』シリーズ、『芸術人類学』『野生の科学』『大阪アースダイバー』『熊楠の星の時間』ほか多数。日本の各地における歴史や文化の生成を人文科学と自然科学の両観点から解き明かそうとする試みである「アースダイバー」プロジェクトや展覧会の監修など、多岐に渡る活動を展開している。

科特隊というジレンマ

 「日本人とウルトラマン」というテーマを深めていきますと、「怪獣」という存在にたいする日本人と欧米人の考え方の違いが、しだいに浮き彫りになってきました。欧米世界では人間は怪獣的な存在から自分を切り離すことによって文明を築いてきたと考えられているのに対して、日本人は怪獣的存在を自分の一部であると考えて、怪獣的存在を自分から徹底的に切り離してしまうことに、強いためらいを感じているのでした。欧米人の感覚では怪獣を滅ぼすことは文明を守ることと同義であるのに対して、日本人は怪獣的なものを自分の内部に組み込んだ文明をつくろうとしてきたようにさえ見えます。そのため怪獣と戦うことは、日本人の心理にとってはある種のジレンマを発生させます。怪獣を攻撃することで、日本人は自分の存在の一部を自分で攻撃しているようにも感じられるからです。このジレンマを象徴しているのが、今回の主人公である「科学特捜隊」です。