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TSUBURAYAライブラリー
第5回『独身のスキャット』
(1970年1月7日~1970年3月18日)
TBS系列/毎週水曜:21時00分~21時30分/全11話

解説:中落合たかし

特撮を封印した都会派コメディ
セクシー路線の時流に乗った
和製『アパートの鍵貸します』

最大の武器であった特撮を前面に出さず、円谷プロが一般的な番組制作会社としても通用することを実証するかのように、大人向けドラマに挑んだ作品が、なべおさみ主演の都会派コメディ『独身のスキャット』だ。円谷一が、父・英二が興した制作プロの仕事に専念するため、在籍していたTBSを退社。局は“土産”としてゴールデンタイムの枠を与え、自由にプロデュースさせたと伝えられている。放送開始後まもなく亡くなった英二の、生前最後の監修作品となった。

分不相応な高級マンションのローン返済に難渋する、うだつの上がらない独身サラリーマンが、夜の時間だけ家の鍵を貸す副業を始めたことで巻き起こる、悲喜こもごも。プロットからわかるように、この企画は、ジャック・レモン主演によるビリー・ワイルダー監督のコメディ映画『アパートの鍵貸します』からインスパイアされたものだ。隣に住むホステスは大原麗子、家具の月賦取り立て人に柏木由紀子を配し、千秋実、ミッキー安川、桜井浩子が脇を固める。毎回入れ替わり立ち代わり、鍵を借りる訳アリの客として、柳家小さん、青島幸男、石立鉄男、山本陽子、樹木希林(当時:悠木千帆)らがゲスト出演。野沢那智の軽妙なナレーションが、可笑しくも温かく包み込む。プロデューサーの手腕が光る豪華なキャスティングである。

芸術祭受賞監督としてジャーナリスティックな視点にも定評があった円谷一は、なぜ本作を手掛けたのか。まず、映画『アパートの鍵貸します』は、作品賞を始めアカデミー賞5部門を受賞した不朽の名作だが、公開は遡ること10年、1960年である。しかし、68年にニューヨークのブロードウェイで、この映画を原作としたミュージカル『プロミセス・プロミセス』が上演。その話題性も相まってか、NET(現・テレビ朝日)の日曜洋画劇場では、同年4月に『アパートの鍵貸します』の日本語吹替版が初放送され、日本人は魅力を再発見。この放送が初見だった人も多いことだろう。

60年代末から70年代初頭のトレンド

それにしても、子供たちから支持されてきた円谷プロが、お色気コメディに手を出すのは、いくら何でも飛躍しすぎたのではないかと捉える向きもあるだろう。なにしろ、毎週水曜夜9時に始まるオープニングのタイトルバックは、身体のラインを強調した女性のセミヌード。肌に、都会人が行き交う昼の光景が投影される。ストーリー上、入浴シーンやベッドシーンも欠かせない。現代の価値観からすれば、ゴールデンタイムにそんな際どい番組が流れていたなんて…と驚くのも無理はない。1970年の年頭に始まった本番組が企画制作された、1969年の世相と併せて考えてみよう。