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第9回『恐怖劇場アンバランス』

TSUBURAYAライブラリー
第9回:『恐怖劇場アンバランス』
(1973年1月8日~4月2日)
フジテレビ/毎週月曜:23時15分~24時10分/全13話

解説:中落合たかし

個性的な監督の作家性を生かし
論理と常識を超えた恐怖に肉薄
カルトな13本の「日本映画」!

1969年は、円谷プロにとって苦難の年だった。前年の68年に製作した意欲作『マイティジャック』と新機軸『怪奇大作戦』は、磨き上げられた特撮技術や人間ドラマの秀作を残したものの、怪獣ブームを巻き起こしたウルトラマンシリーズのようなムーブメントを生み出すことはできず、製作プロの生き残りを懸けた必死の闘いが始まっていた。契約社員を含め最大150人に膨れ上がっていたと言われる組織は、大規模なリストラを余儀なくされた。企画文芸を率いてきた脚本家・金城哲夫は自ら退社を決意し、3月に沖縄へ帰郷する。上原正三も会社を辞め、フリーの脚本家に転身。黄金期の現場を知る主要スタッフは、プロデューサーの熊谷健や監督の満田かずほ※、企画の田口成光ら数名を残すだけとなった。そして新たな仕事を得るため、企画書をまとめ局へ売り込みに行く日々が続く。
※「かずほ」は「禾(のぎへん)に斉」

『怪奇大作戦』のその先を目指して

宇宙ブームがピークに達したアポロ11号による月着陸は、この年の7月。翌70年には大阪万博を控えていた。しかし公害問題を始めとして社会の歪みは拡大し、すでに科学礼賛の風潮は綻び始め、出版界を始めとするメディアの世界では、まるで反動のように「怪奇」や「恐怖」という論理や常識を超えたものへの欲求が高まっていた。科学による解決を打ち出していたものの『怪奇大作戦』における人間の心の闇というモチーフは、方向性として決して間違っていなかった。そして69年、フジテレビで成立させた1時間枠の企画が『恐怖劇場アンバランス』だ。タイトルに『ウルトラQ』の前身だった『UNBALANCE』を引用。再利用ともいえるが、初心に戻って挑むという意味合いも読み取れる。企画書には、特色として4つのテーマが掲げられている。「時代劇怪談ではない」「視覚的な恐怖」「醜悪なものは避ける」「特撮が大活躍」。

1話完結によって監督や脚本、主演俳優も毎回異なる形式。企画当初は、銀座のスナック「アンバランス」を舞台にして常連メンバーに絡んで事件が起きるという設定があった。しかしその案は消え去り、毎回共通するスタイルとして、『ミステリー・ゾーン』のロッド・サーリングや『ヒッチコック劇場』のアルフレッド・ヒッチコックが登場して番組の案内人を務める形式を採用し、構成作家・作詞家・俳優として人気を博していた青島幸雄がホスト役に当たることになった。現代版怪談ともいえる本作最大の特色とは何だろう。それは、それぞれに携わった個性的な監督たちのカラーが色濃く反映されたことだ。ここには、60年代最後の日本の不穏な空気や滅びゆく風景が封じ込められている。テレビドラマというよりは、正味55分の怪奇色あふれる13本の“日本映画”と呼びたいほどだ。